「有機的な建築のデザイン」とは、環境と調和している建築デザインであることや、自然や生命の形状、動き、リズムを模倣または取り入れ、人間の生活や環境になじむように設計された建築デザインのことを指します。有機的な建築は、自然の中での人間の存在を重視し、自然と調和したり、流動的な線や曲線を用いることもあります。今回は有機的な建築について紹介いたします。
有機的な建築の特徴
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自然素材の使用
木や石などの自然素材が好んで使用されます。これは材料としてであったり、デザインのモチーフとして採用されることも含みます。 -
環境との調和
建物の配置やデザインが周囲の環境と調和するように計画されます。配置計画や建物の形態だけでなく、インテリアにも配慮します。その過程で建物の高さや色彩を工夫したり、周辺の自然環境が連続するよう植栽計画をしたりするなどがあります。 -
相関性の設計
その建物で過ごす人間の感覚や心地よさに配慮し、室内の採光、風通し、照明、熱環境などが考慮されます。また、建築と人を繋ぐ要素として建物だけでなく家具も含めて建築との調和を図り、人、家具、建築、周辺環境が相互に良い関係性をもつようなデザインとなります。
有名な有機的建築の設計者としては、フランク・ロイド・ライトやアントニオ・ガウディなどが挙げられます。彼らの作品は、有機的な建築の理念や美しさを体現しています。 特に、フランク・ロイド・ライトは、有機的建築の先駆者として知られ、彼のデザイン哲学は「有機的建築」の概念を強く体現しています。ライトの有機的な建築の特徴をご紹介します。
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環境との調和
ライトは建物がその土地と一体化することを重視しました。例えば、彼の代表作「フォーリングウォーター」は落水荘という呼び名で日本でも有名ですが、自然の滝の上に建てられており、自然環境との深い結びつきを感じることができます。 -
自然素材の使用
彼の作品では、現地の石や木を多用し、その土地特有の風合いを生かすことを重視しました。 -
水平線の強調
ライトの家は低くて広がりを持ち、水平線を強調するデザインが特徴的です。これは、大平原やアメリカの中西部の風景を反映したものと言われています。 -
オープンフロアプラン
内部の空間は、部屋と部屋の境界を最小限にし、一つの大きな空間として設計されることが多いです。これにより、居住者は自由で開放的な感覚を持つことができます。 -
自然光の取り入れ
窓の配置や大きさ、方向を工夫して、自然光を最大限に室内に取り入れるデザインがされています。 -
人間中心の設計
ライトは建物を「人のための背景」と考え、人間の生活や動きを最優先した設計を目指しました。
フランク・ロイド・ライトの建築は、その場所や環境、そして居住者のライフスタイルに深く根ざしたデザインとなっています。そのため、彼の作品は時代を超えて多くの人々に愛され続けています。
日本にもフランク・ロイド・ライトによって設計された建築物が存在します。有名なものでは、「旧帝国ホテル」の主要な部分です。
旧帝国ホテル
1923年の関東大震災の直後に完成したこのホテルは、ライトの設計哲学が詰まった建築物として知られています。特に、耐震設計が取り入れられており、そのため関東大震災を損傷少なく乗り越えることができました。現在、ホテルの一部は解体されましたが、中心部は愛知県の「明治村」に移築保存され、見学し、その雰囲気を体感することができます。移築といっても、鉄筋コンクリート造の建物をそのまま移すことは困難ですのでその建物の空間の質や寸法、素材感などを踏襲して再現する「様式保存」を採用されました。そこでは意匠性の高いタイルや窓、照明器具、家具など多くのデザインからライトのデザイン、有機的デザインに触れることが可能です。そのどれもに共通するのがどこか温かみを感じるということです。その温かみとは心地の良さと言えるでしょう。それはまさに先にご紹介した有機的建築の特徴とライトの細部にまでこだわる熱意が訪れる人に安らぎや感動を与えてくれるからなのでしょう。他にもライトの影響を受けた建築家や彼との共同作業による作品が日本各地に点在しています。しかし、彼自身の直接のデザインとしては「旧帝国ホテル」が最も有名です。
旧帝国ホテルのレンガの話
使用されているレンガは実は愛知県の常滑市で作られたものであることはご存じでしょうか。材料を模索しているライトが実際に常滑市まで来て、材料の確認をしたそうです。ライトの意匠性に応える土質、レンガ造りの技術が愛知県常滑市にあったのです。常滑市は六古窯と称され古くから製陶業が盛んで技術も高い地域です。旧帝国ホテルは東京に建てられましたが、愛知県の粘土によるレンガが選ばれ、そして愛知県に様式保存(再生)されているというのはなにか縁を感じます。なお、明治村に保存された建物の一部には当時のレンガがそのまま使われているそうです。ぜひ探してみてください。
ここまで読んで下さりありがとうございます。旧帝国ホテルのお話が続きましたが最後に、ライトの代表作の一つであり、比類なき自然との調和を実現し、水平線の力強さと美しさをもつ落水荘の写真をご紹介しながら締めくくりたいと思います。上手く撮れていない写真ですが有機的な建築を感じてもらえましたら幸いです。こんな写真ではわからない!という方はぜひ実際に行ってみてください!私はかつて訪れる機会を得たこと、この空間を体感できたことはとても幸運で一生の宝と思っています。




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