直感と論理的な思考

建築を設計する上でいつも考えるのが、果して直感的にデザインした方が良いものができるのか?論理的に考えて答えを導いたほうが良いものができるのか?一体どちらの方法が良いのかということです。


私は両方必要だと思います。ある人は直感のほうが大きいし、ある人は論理的のほうが大きいし、色々な導き方があっても良いとは思いますが、私は必ず両方を捨てずに考えます。出来たものを見比べてみると、どっちか側に傾きがあったとしても、設計プロセス自体は両天秤でやっているつもりです。
おそらく他設計者と比較すると、私の場合は論理的に導かれているほうが大きいと思います。仕事で学習してきた背景の違いや、私自身の性格によるものが大きいと思いますが、何よりもクライアントに対して思い付きをそのまま提案していては、仕事として成立しない場合が多いので論理的が優先してしまいます。
前職で大型建築に携わっていたことも影響していると思います。大型建築を設計する場合、色々な人にその成り立ちを説明しなければなりません。単なる思い付きのアイデアでは、たくさんの人に納得してもらえないので、提案するアイデアに理路整然と理屈が通ったポリシーを持ち合わせていなければならないのです。だから論理的を優先して設計するのです。
論理的な思考力を持続するには、結構なエネルギーを使います。私自身、これ捨てたらきっと楽に仕事ができるだろうなぁと感じながらも(笑)、捨てきれずに必死に頑張っています。もしそれを無視して仕事を進めたら、クライアントに申し訳無い気持ちになるし、それを守ること自体がモラルだとも思っています。ですので、いつも100点を目指してプランを誠実に積み重ねて行きます。
但し、論理的を優先しすぎると設計が退屈になってしまいます。クライアントが民間で、中央集権的に案が決まる場合は別として、公共建築などは民主的に意見を組み入れ、それを論理的な思考で組み立てながら同時に豊かな空間を実現していくので、凄く高度な仕事だといえます。
ところで私の場合、直感は自然に出てきます。必ずといってイメージが私の前に現れます。でも、この直感だけに頼ることはしません。頼った時点で先に言ったモラルに反することになるので大切に取っておきます。閃きは全くの別ものです。閃きというのは、論理的に思考したものと、直感的に感じたものがある時繋がり、独自のアイデアとして集結したものです。私の場合、実はこの幸せな接点を探しながら設計の仕事をしているのです。私に限ってかもしれませんが。
とまぁ、こんなことを沸々と考えながら仕事をしているので、机に向かって一日中仕事をしていると疲労困憊になる時もあります。
直感的を信じて、論理的に考え、論理的に導かれた答えと直感的に感じたことを結びつける。それがデザインとなって現れるのです。

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