じゃあ、一体何がオリジナルと言えるのか?
まだまだ答えていないような気がしたので、もう少し伝えます。
全ての芸術に共通していることですが、人が何かをつくる時に何かに影響を受け、何かの基盤の上で成り立たせるので何もかも純粋にオリジナルなんて無いことになります。
例えば、ピカソのゲルニカやアビニオンの女達はキュビズムの代表作ですが、キュビズム時代の前にアフリカの芸術にインスパイヤーを受けた時期があり、現地まで行きお面や彫刻の民芸品を買いあさったそうです。キュビズムの顔はその民芸品そっくりです。果たしてこれは盗作でしょうか?そうではありません。そもそも同時期にはジョルジョ・ブラックも同じようなキュビズムの絵を描いていますので、ピカソだけのオリジナルではありません。
アンディ・ウォーホルは有名人のポートレイトを自分の作品にしてしまいました。有名人を大量消費のイコンにするコンセプトが芸術として認められました。有名な作品で花がありますが、他人の写真を無断借用したそうで裁判で負けたそうです。負けたので、盗作になったのか?というとそうではありません。実際は幾らか払って許してもらったそうですが(花の作品も差し上げたらしい)、今でも彼の立派な作品です。
私も建築の設計をする時、あれのあの部分に良く似てしまったと感じる時があります。それは普段、建築家の作品や他のデザインに感銘を受けて自然に影響を受けているからです。もし同じ分野の有名な作品に深く感銘を受けて、その後それに類似した作品になった場合、故意ではなく自然にそうなった場合、その作品は盗作なのか?これは○○のオマージュだと言えば盗作とならないのか?とてもとても難しい問題です。
何度も言いますが、オリジナルとは独創性のことを示します。皆何かしらインスパーヤーされて作品に反映されるのですが、そのままそれを表現するのではなく、作家本人の個性みたいなものがどこまで反映されているのかが重要なのだと思います。作家は自分の魂を作品に注入します。そんな作品にはその作家のパーソナリティが現れます。ピカソもウォーホルも元ネタなんか微塵も感じさせない個性を作品で表現しています。その部分があるのか、無いのかがオリジナルなのか否かの判断に繋がるのではないでしょうか?
東京五輪のエンブレム、デザイナーの考えなどがネットで出ています。今度出てくるエンブレムは、どんな観点で皆さんは見るのでしょう?前のエンブレムも含め今度出てくるエンブレムも、似ている似ていない、よりも、私はそんな観点で見たいです。