Outstanding

先日Turn,Turn,Turn, がアメリカ・ニューヨークの建築賞Architizer A+ Awardsから特別賞を頂きました。 数ヶ月前に応募して時間が経っていたせいか、すっかり忘れていました。ある日、一言だけ英語で“outstanding“と書かれたメールが私に届きました。英語のoutstandingは突出しているとの意味で、褒め言葉です。なに??と思って相手先のメールアドレスを見たら・・・architizerと書いてあるじゃないですか!! もしやもしやとワクワクしてArchitizerのHP、A+ Awardsのところを見るとTypology CategoriesのSpesial MentionのところにTurn,Turn,Turn, bandesign.ltdを見つけました。惜しくもファイナリストには選ばれませんでしたが、とてもとても嬉しい瞬間でした。


私はニューヨークに3年近く居ましたが、もうこんな場所に戻れることはないのか?なんて感じながら帰国して9年程立ちました。特に後半はニューヨークシティの設計事務所に居たので今の日常とはかけ離れた感覚で、でも確かにあのブロードウェイを歩いて事務所に通っていたので、今思い出すとほんとかなぁ?と嘘のように感じます。私が居た事務所は、SoHo地域近くにありました。SoHoとはSouth of Houston streetにありお洒落な場所で有名です。厳密に言えばその中でも北側にあったので、North of Houston street(NoHo)でした。その辺りのブロードウェイは皆さんが想像する斜めにはしる道(タイムズ・スクエアを想像して下さい)ではなく、真っ直ぐはしっていて普通の大きな通りです。そのブロードウエイ沿いで1階がコンビニで向かいにはStarbacksがありました。毎朝1ドル67セントで(今でも覚えている)Coffee of the dayのホットのトールサイズを買って事務所に入るのが日課でした。アメリカはショートサイズがありません。ですのでそれ続きで10年近く経った今でも私はトールを買ってしまっています。(笑)
ある朝、普段と同じ様にレジで順番を待っていると、若い店員が馴れ馴れしく、“お前疲れてるだろ?”と聞いてきました。はぁ?そんなこと何で分かるんだと思い、“君には何故俺が疲れていることがが分かるんだ?”と聞き返しました。そうしたら、“何故なら・・・俺も疲れているからだ!!”と後に待っているお客さんそっちのけて二人で笑いました。1階のコンビニでは、色んな雑貨が売っていて、ある日手持ちに100ドルしかなかったので1ドルのガムを買いました。分かり易い両替です。(ゴメンなさい)そのレジのおじさんは嫌な顔をせず、レジスターの機械の中から10ドル札、1ドル札を何枚もだして数えだしました。“○、#、▽、*、□・・・・・” 始めて聞く数字だったので、どこから来たの?と聞くとパキスタンと言っていました。インド地方の数字の数え方だそうです。本当のインターナショナルってこういうことなんだと始めて実感しました。
全世界40以上の人種、多種多様な文化の人達が一箇所に集まっている街、それぞれの生活習慣が別々に確立されており、下手したら何千何万の人の習慣が個別に存在し、それが一箇所に集まりクロスオーバーする、そんな状況がStarbucksやコンビニで日常的に発生してる街なのです。すごく雑な表現で申し訳ありませんが、ニューヨークシティはそんな街です。そのような街の中で仕事をしていると、何を目指して建築をつくれば良いのかを以前よりももっと考えるようになりました。そしてその答えがクリアになりました。その仕事にどんな人達にでも受け入れられる普遍的要素がない限り、またその質を少しでも上げない限り、そんな状況中では通用しないし、相手にされないということを実生活で感じられたことが一番の収穫でした。
私のニューヨークシティでの生活は何をしても始めての体験で本当にドタバタした毎日でしたが、その場所からの吉報outstandingは私にとってあの体験が本当に収穫であったことを確認できた瞬間でした。ファイナリストに入れなかったことも、“少し足らなかったのでもっと頑張れよ”と言われているようで私にはかえって良かったと思っています。
追伸、2作品も入選されているMarcio Kogan氏率いるStudioMK27は、ブラジル、サンパウロに事務所を構える設計事務所ですが、世界的にとても有名です。その人の後に私の事務所名、bandesignが書いてあること自体本当に恐縮していますが、その辺りにもグッときています。(嬉涙)