今回はCLTとならび木材を建築資材として使う上で非常に有用なLVLついてお話いたします。
まず、LVLとCLTを比較してそれぞれの特徴や構造的性質を説明します。
LVL (Laminated Veneer Lumber) と CLT (Cross-Laminated Timber) は、両方ともエンジニアードウッドとして知られる製品群に属しますが、製造方法や用途には違いがあります。
LVL (Laminated Veneer Lumber)
製造方法
木の単板を積層し、平行方向に並べて接着してつくられます。
特徴
木材の天然の欠陥が少なく、均質な材料として製造されます。
挽き板より厚い単板を積層することで強度が高くなり、寸法のばらつきも少なくなるため主に梁や桁、桁などの軸材としての構造部材として使用されます。
構造的性質
高い曲げ強度を持ち、一般的な木材よりも耐荷重性が高いとされています。
均一な性質となり、構造強度について信頼性が高い特性を持っています。
CLT (Cross-Laminated Timber)
製造方法
木の挽き板を交差させながら積層し、それを接着することで板状の大型のパネルを作成するようにしてつくられます。
特徴
積層する際に木の板目を交差させるため、各層での木の伸縮を相殺し、ゆがみや伸縮を軽減した安定した材料となります。
多くは壁、床、屋根などの構造パネルとして使用されます。
構造的性質
木の板が交差しているため、2方向に強度を持っています。
また、これらに共通する点としては積層によって耐火性や耐音性が向上させることが可能となります。
まとめますと、LVLは強度が高く均一な構造部材としての用途が主であり、CLTは大きな板状のパネルとして様々な構造用途で利用されます。
LVL(Laminated Veneer Lumber)を建築に採用することのメリット
環境的側面
- 持続可能性
LVLは再生可能な資源である木材から作られています。適切に管理された森林からの木材を使用することで、持続可能な建材供給が可能となります。 - カーボンの吸収
木材は成長過程で二酸化炭素を吸収し、カーボンを蓄積します。LVLを使用することで、建築物がカーボンの貯蔵として機能することが可能となります。 - 再利用とリサイクル
LVLは再利用やリサイクルが容易であり、廃棄時にも環境にやさしい選択となります。
構造的側面
- 強度と一貫性
LVLはその製造過程で、木の不均一性や欠陥を除去・最小化することができるため、高い強度と一貫性を持った材料として利用することができます。 - 寸法の安定性
LVLは湿度や温度の変動に対しても寸法が安定しており、伸縮や歪みが少ないです。 - デザインの柔軟性
長尺のLVLビームやパネルは、従来の木材よりも大きなスパンを可能とするため、オープンな空間や独特のデザインを実現するのに有利です。 - 建設の効率性
LVLはプレカットやプレファブリケーションが容易であり、現場での建設時間を短縮することができます。
このように、環境的および構造的な側面から見ても、LVLは多くのメリットを持つ建築材料として評価されています。
では一方、CLTには上記のような環境、構造的メリットはないのでしょうか。またはあるとすれば、どちらがより優れているのでしょうか。
実はCLTも、LVLと同様に多くの環境的および構造的なメリットを持っています。
CLTとLVLのどちらが「より優れている」と一概には言えません。それぞれの材料は、その特性に応じて最適な用途や状況があります。例えば、大規模な多層建築や壁パネルにはCLTが、長尺の梁や柱にはLVLが適している場合があります。具体的な設計要件に応じて、最適な材料を選択することが重要と言えるでしょう。
次に、今回の題目であるLVLを採用した建物事例をご紹介します。
国際基督教大学(ICU)体育館エントランス棟 東京都
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この体育館は、木の屋根のカーブデザインを特徴としており、エントランス棟にLVLによる折板構造が採用されています。屋根間の隙間は採光と換気のための開口として設計され、明るく快適な室内環境が提供されています。
那須塩原市図書館 みるる 栃木県

この図書館は、地域の森の存在を反映して設計されています。館内には言葉や展示物、さまざまな活動が組み込まれ、来館者はこれらの要素を通じて多様な体験を得られるようデザインされています。特に、木立の樹冠を模したデザインや放射状の本棚は、自然環境との一体感を感じられるでしょう。この図書館は、単に集まる場所としての役割だけでなく、市民の学びや交流の場として、地域全体の発展に貢献することを目的とされています。
近年、建築物の木質化が世界的に推進されていますが、特に日本においては、いくつかの大きな背景が存在します。
まず、日本には豊かな森林資源があります。日本の土地面積の約2/3は森林で覆われており、その多くが持続可能な方法での管理や再生が可能となっています。しかし、国産の木材の利用率は低く、海外からの木材輸入に依存する傾向が強まってきました。これに対し、国産材の有効利用を促進することで、地域の経済活性化や持続可能な森林管理の推進、さらにはCO2の吸収といった環境面でのメリットを享受することができます。
次に、木質建築には特有の心地よさがあります。鉄骨造やRC造の建物とは異なり、木は自然な素材として、暖かみや柔らかさを感じさせる特性を持っています。特に日本の伝統的な木造建築は、その美しさと機能性を兼ね備え、人々の心に安らぎを与えてきました。この木の特性を活かし、現代の建築に取り入れることで、より人間中心の快適な空間を創出することが期待されています。
これらの理由から、建築物の木質化が推進される動きは、環境的、経済的、そして文化的な側面からも非常に意義深いものと言えるでしょう。
LVLの技術によりCLT同様に木材の応用の域を拡げたことは間違いないでしょう。それによりより安定した構造の、そして意匠的にも素晴らしい建築が登場しています。
この先も材料開発や構造技術の発展とともにLVLがより素晴らしい建築を実現させると考えています。
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