トリアージ

 診療所の計画における院内トリアージの配慮ポイント

トリアージという言葉を聞いたことがあるでしょうか。医療の場で行われる緊急症状の判定と処置の優先順位付けをすること指します。例えば災害や大事故で多くの負傷者がいる場で医師が判定基準をもとにトリアージタッグと呼ばれる黒色、赤色、黄色、緑色のタッグを利用し行います。一方、大規模な緊急事態の場でなく、通常診療の中でもこれに似た緊急性、優先性の判断と処置が行われることがあり、院内トリアージと呼ばれています。記憶に新しいところでは新型コロナウィルス感染症の診療として別室や場合によっては屋外での診察がなされました。今もインフルエンザやコロナへの感染が疑われる場合、一般待合室でなく、即別室へ案内されそこで診察を受けるということがあります。このように外来患者に対して通常診療の中で行われるものを院内トリアージと言います。感染症の院内拡散を防いだり、患者への迅速な対応を目的としています。

今回は診療所においてこの院内トリアージを効率的に行うための建築計画の重要なポイントをご紹介します。

1. アクセシビリティ

診療所の入口は容易に見つけられ、利用できるようにする必要があります。これにより、緊急時の患者の到着がスムーズに行えます。また、一般外来と緊急外来の玄関が別々に設けられる場合もあります。明確に区分けし、迷うことがない外部動線としつつ、且つ内部の医療部門との動線の連携も考慮すべき重要なポイントです。

2. 広々とした待合室

待合室は十分な広さを確保することで患者が多い場合には緊急度に応じてエリアを分けることが可能です。トリアージが効率的に行えるだけでなく、平時にも、患者同士の離隔距離を保つことに有用です。

3. 診察室への流れ

待合室から診察室への流れは、緊急度に応じた優先順位でスムーズに行えるように設計する必要があります。診察室と待合室を近接させることや感染症蔓延防止のため隔離を目的とする待合室、処置室を設けた場合にはエントランスからの動線を短くすることや建物内の医療部門動線からのアクセスの容易性が求められます。

4. プライバシーの確保

患者のプライバシーに配慮し、適切に壁やパーテーションで区切るなどの配慮が必要です。また、一般患者から隔離されたということが患者本人も他の患者も相互に気を遣うこととなるので当の目的の一つでもある感染症防止の観点からも、会計、処方箋の発行、薬の受け渡しも動線を分けることが望ましいでしょう。スムーズに安全に、そしてストレスフリーに診療を受けられるようにすることが重要です。

5. 衛生環境

感染症の拡大を防ぐために、エントランスや診察室などに適宜手洗い施設を設置することや十分な換気ができるよう窓や換気扇を計画することが必要です。換気設備の設計において感染拡大を防ぐためにHEPAフィルターの採用も効果的でしょう。

以上のような要点を考慮することで、院内トリアージが効率的かつ迅速に行える診療所の建築計画が可能です。

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