図書館

静寂で快適な空間を実現するため遮音性、吸音性を確保するためのポイント

住宅、オフィス、図書館、美術館など静粛性を求められる建築物やそのスペースでは音に配慮した計画が求められます。音を不快に感じないようにするにはいくつか対処法があります。まず1つ目に音が発生しにくいようにする、2つ目に生じた音を遮音する、3つ目に音を吸音するといった大きく3つの段階に応じた対処法があります。1つ目の音の発生を抑えるという点については機械的な点でいえば消音機能や静穏性に配慮して機器を選定、採用するなどの工夫が挙げられます。ただし、人の活動に制約を課してしまうことがあるかもしれませんので、バランスを考慮する必要があるといえるでしょう。
今回は遮音、吸音についてご紹介します。建築物の遮音性、吸音性を高めるために壁、床、窓の設計において考慮すべきポイントをそれぞれの部位ごとにご紹介します。

1.壁

  • 質量: 一般的に、壁の質量が大きいほど効果が高まります。重い材料や複数層の構造は、音波のエネルギーを吸収するのに効果的です。
  • 隙間を塞ぐ: どんなに厚い壁で遮音対策をしても、隙間があれば音は容易に通過してしまいます。そのため、完全に遮音するためには、隙間をしっかりと封じることが必要です。壁と壁の取り合い部分や配管が壁を貫通する部分などにはどうしても隙間ができます。このようなウィークポイントへの対策として遮音コーキング材があります。通常の遮音性を考慮しない場合のコーキング材に比べ1.5倍ほどの比重があり、弾力性にも優れることで遮音性を確保するものです。

2. 床

  • 構造: 壁同様に遮音や吸音に配慮した材料による構造とすることで音の発生や伝達を抑えることが可能です。床で発生する音の遮音性を表す指標として「床衝撃レベル」というものがあり、L30~80の等級があります。これは音が発生した階から床を介して下階にどれだけ音が伝わってしまったかを数字で表されており、数値が小さい方が性能がよいといえるものです。上階から下階への音の通り道には上階の床仕上げ材、床下地材、天井裏、下階の天井下地材、天井仕上げ材があります。上階で発生した音がこれらを通過し、下階ではなるべく聞こえないようにしようとするとき、メーカーの試験において性能が認められた構造を採用することが設計段階での重要なポイントです。利用段階での工夫としては床にラグなどを敷くことで歩行音や落下物の音を吸収するのに役立ちます。
  • 重質床: コンクリートや石材などの重質な床材は、空気中の音波の伝播を減少させるのに役立ちます。ただし、硬質の床は靴によっては靴音が顕著に表れますのでその反射音が気になってしまう場合があることには要注意です。音の発生源に対して遮音、吸音だけでなく反射音も考慮するべき重要なポイントです。

3. 窓

  • 厚いガラス: ガラスの厚みを増すことで、音の通り道が長くなり、その過程で音を減衰させることができるため遮音性能をある一定の範囲で向上させることができます。
  • 複層ガラス: ガラスを単板ではなく複層にすることは断熱性の向上だけでなく、遮音性もある一定の範囲で向上させることができます。
      ”ある一定の範囲”という点が引っ掛かりましたか?実はガラスを厚くすること、空気層を含む複層ガラスにすることはすべてにおいて遮音性のが向上するわけではないのです。下のグラフはガラスの遮音性能を表したものです。
遮音性能グラフ

単板ガラスは高音域の2000Hzの辺りで遮音性が低下すること、複層ガラスは中音域の500Hz辺りで遮音性が低下するといわれています。またそれぞれの遮音性が低下する音域では単板ガラスの方が複層ガラスより遮音性に優れたり、複層ガラスの方が単板ガラスより遮音性が優れたりと逆転現象のようになっています。

音は目に見えず、音の大きさや高低といった要素が複雑に関係し、さらに反射することで遮音されたり増幅されたりもするものです。また、音の感じ方に個人差もあることからその対応には慎重に、十分な配慮と検討が必要といえるでしょう。
これらの設計ポイントを考慮し、適切な材料と構造を選定することで、建築物全体の遮音性能を高め、快適な空間とすることができるでしょう。

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