A case of you

直訳するとあなたの場合ですが、誰の為の建築なのかいつも考えながら設計します。本当にそうなのか?と思われたかもしれません。建築家が実現したい建築というものも確かに存在しますが、近ごろは自分自身の中で切磋琢磨してきたものを表現しても限界があって、むしろクライアントや他使い手の力を借りしてデザインした方がより豊かなものになると思い始めています。この業界に身を置き色んな人と接してきましたが、人に寄り添える建築やデザインはそんな中から生まれるのだと知りました。クライアントから時に一見無茶ぶりだと思われる要求(失礼しました)も受け入れることにより、自分の幅を更に広げることもあるということです。A case of youはジョニ・ミッチェルの歌ですが、彼女は貴方がワインなら1ケースでも飲めると歌っています。彼女が意味することは違ったニュアンスですが、貴女の為なら何でも出来るという意味であれば少しだけ似ていると思っています。

Never changing moods

太陽は東から昇り西に沈みます。この先絶対に変わらない事象です。春夏秋冬の太陽高度の差は、人が建築の中で温度以外に様々なことを感じることになるでしょう。夏は部屋の窓や扉を全開にして風を通した時、人はその開放感により爽やかさを感じるでしょう。冬は間仕切りを閉めて小さな空間の中で人は親密になり温かさを感じるでしょう。温熱環境のメカニズムを知ることも勿論ですが、肝心なのはその場所で人がどう感じれるのかを想像することが重要なのだと思います。これは一年間で起こる現象ですが、今度は何十年という単位の話です。建築は鉄筋コンクリート造なら最低でも60年、長くて100年存在可能です。木造でも最低30年は可能です。果たして我々建築家は100年先にこの社会がどのようになっているか想像できるでしょうか。建築は3次元のデザインを求められますが、もう一つ時間軸を加えた4次元のデザインが必要です。変わらないことに忠実に向き合う姿勢がとても重要だと考えます。

Structural design

私の作品の多くはこれまでに類のない構造も多いです。構造設計のプロと共同で進めます。鉄筋コンクリート、鉄骨、木の三つが主な材質ですが、材質的な特性を生かした建築の構造体を目指します。鉄筋コンクリート造は一度作ってしまったら、壊さない限り動きません。重くて固いからです。その構造体からは安心感が得られます。鉄骨は柱間の距離を長くすることが可能です。引っ張られる力にもより耐えられます。木は加工性が容易で軽い素材です。コストも安いです。クライアントから与えられた条件、敷地、コスト、その他要望に対して、それら三つの構造体を適材適所に使用します。絶対的に動かない部分に鉄筋コンクリート造、将来増改築が予想される部分を木造にするような構造はこれまで存在しなかった新しい構造体を完成させています。

Air design

皆さんは冬に着るダウンジャケットの構造をご存知でしょうか。ダウンという羽は水鳥の胸の毛で一番保温性が高い羽として知られています。それゆえダウンジャケットに採用されているのですが、実はその中にフェザーという骨付きの羽を混ぜています。その割合はダウンが85%、フェザーが15%が多いです。一見ダウン100%が一番暖かいと思うかもしれませんが、ダウンだけでは柔らかくて潰れてしまうのでフェザーを入れて空気層を確保するのです。単に高性能断熱材を採用すれば良いというのではなく、上手く空気をコントロールすることでもっと良好な環境は作れるということを知ることができます。日本の和小屋の構造は、シンプルに木材と紙で構成されていました。日本の季節に合った可変的な平面プランです。障子や襖を開けたり閉めたりすることで空気のボリュームを変えながら順応します。断面も非常に考えられています。縁側、小屋裏、床下と室内空間は空気で包まれています。このようにして日本人は古来から日本の風土に順応してきました。如何にして空気を捕まえるのか、空気をデザインすることで室内の環境性能は左右されるのです。私がアメリカの設計事務所に在籍していた時、ルーマニアの首都ブカレストにオフィスを設計しました。敷地の西側に広い道路があり西日がたっぷりと入る建物配置計画でした。そこで我々はガラス面に外型ブラインドを設置しました。カーテンやブラインドは室内に設置するものだと考えられています。その場合ガラスとカーテンの間には日の光は室内側に入っているので、エアコンはその環境を改善するために多大なエネルギーを消費することになっています。そのことを知ればブラインドは外側で陽を遮断した方が良いという発想になります。日本のすだれと同じです。そのような環境に呼応するデザインは今や世界のスタンダードになって定着していますが、海外の建築家とそのような協働が私の建築人生の財産になっています。

SDGs

SDGsとはSustinable Development Golesの略で、持続可能な社会実現の為に国連で掲げられた国際目標です。近年建築の業界では頻繁に聞こえてくる標語です。私の日建設計時代では、街や周辺環境に対して多大な責任が発生する大型建築に携わっていましたが、持続可能性(Sustinability)は、一番意識をしていた概念でした。このSDGsは、経済が発展する反面、損なわれる人の生活の豊かさについて地球規模にも関わらずとても分かり易く気付かせてくれる標語です。私たちは、小さな住宅でも大きな建築でも必ず意識しながら設計します。建築そのものも豊かさも確かにありますが、それ以上にそこで得る様々な繋がりから本当の豊かさを得られると思うからです。単に電気代が安いくてお財布に優しいと感じたとことが、実は社会全体や世界に繋がっていることを細やかにも感じられる生活はとても豊かな生活だと思えるからです。英語のIluminateは、〜を照らす、照明するの意味ですが、更に啓蒙する、光明を投ずるの意味も含まれています。建築が生活の豊かさを気付かせてくれる、未来を明るくしてくれる。建築デザインでそのようなことを伝えていければと思っています。

Architecture has long life and difference from another design. We don’t design with an idea, but We do design for never changing. For example, the sun come up in the east, and set in the west. It is definitely never changing forever. I want to design intentionally for long life. In addition, long life is closely related with architectural culture. Historical architecture is being existence strongly. Could you imagine the architect’s mind? If he were not enthusiastic, the historical architecture wouldn’t be existence. The design work might be for his life. It is clear that architecture is same as fine art, another art. I am designing everyday, I hope to catch opportunities like that someday.